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男女公論

2010/11/11 UPDATE #004

坂本龍一×湯山玲子 男女公論

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第五章
「ホストクラブのオトコたち」

坂本:ホストクラブって興味あります?

湯山:行ったことありますよー。取材絡みで初めて遊びにいったんだけど、はじめの印象はみんな頭が悪い!っていうか、話がどうにも展開しない。

坂本:あー、頭は良くないって言うね(笑)。

湯山:どれだけ私を喜ばせてくれるのか! っていう期待感で行ったのに、トークも別に上手くもなんともない。しばらくして、隣にけっこう好みのトヨエツ(※1)系の男が来たんですね。で、私の性格上、「さらに、この場を盛り上げねば!」と、私がギャグを連発。私が笑わせてどうするって思いながら、周りに他の人も集まってきちゃって、「何でお金払ってこんなに努力してるんだろう?」とか思いながらやってた。そうしたら、突然、今まで無反応だったトヨエツが「アハハハ」って、ものすごーくカワイイ笑顔で笑ってくれたのね。その瞬間に思ったことは、「・・・・・・次も来よう!」(笑)。

坂本:それが悦びになっちゃったんだね。変なところに快感を感じて(笑)。

湯山:知り合いの男性に話したら、銀座のクラブも似たところがあって、サービスされるんじゃなくて、「高嶺の花の気をひく」遊びが楽しいんだって。手口なんだよね。

(※1)日本の俳優、豊川悦司のこと。
90年代に出演したTVドラマ『NIGHT HEAD』や『愛していると言ってくれ』では、影のある演技で多くの女性ファンを獲得。
近年はシリアスからコミカル、オタク系から悪役まで、実に様々な役どころをこなす演技派俳優として、第一線で活動している。
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坂本:銀座のホステスも頭がいいらしいものね。実は知り合いがホストにハマったことがあってね、何十万もつぎ込んだらしいんだよ。その彼女は美人で、ほうっておいても男に欲情されるタイプなのに。なんでそんなにハマったの?って訊いたら、「バカすぎて面白い」って。あまりにバカすぎて、やっぱり魅かれちゃうんだって。

湯山:それ、分からないでもない。これから来ますよ、バカ男。この能率万能主義の世の中でさ、かえって貴重な存在。もはや、アート作品みたいな域でしょう。

坂本:バカが可愛くなっちゃうらしい。それって母性本能の一種? 僕行った事ないけど、なんとなくさ、そういうホストたちって、客の女性に向かって「オレは、こんな所で終わる気ないっすよ!」とか言ってる感じじゃない?

湯山:それって『寅さん(※2)』でしょ。あの作品はいろいろ、女殺しの名言がありそうだもんなー。

坂本:浅丘ルリ子(※3)が寅さんにキュンとしちゃうみたいな、そういう感じに近いのかな? 彼女に言わせると「本当にバカだから、大丈夫かな? と思ってまた行っちゃう」んだって。

湯山:バカのなかでも「真心、真っ正直」ってのが手口かも知れませんよね。そういうのに引っかかったんじゃないのかね。

坂本:ちょっと前のホストクラブだったら、女性が煙草くわえたらすかさず火を点けてくれるような、キザな感じだったけど、今は違うんだろうね。

(※2)山田洋次監督のTVドラマおよび映画シリーズ『男はつらいよ』の主人公。
その他、詳細は第四章参照。
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(※3)日本の女優。美少女女優としてデビュー以来、数々の映画でヒロインを務める。
中でも、『男はつらいよ』シリーズで演じたクラブ歌手"リリー"役は大好評を博し、マドンナ役としてはシリーズ最多となる4回出演。寅さん役・渥美清の遺作となったシリーズ第48作『男はつらいよ 寅次郎紅の花』(1995年)でもマドンナを務めた。
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湯山:ホストクラブって、古典的な男女関係がよりクローズアップされるんだって。だから、男は女にサービスしなくて、オレオレ系なんですよ。「オレについてこい」っていうそれこそ土佐の一本釣り(※4)みたいな、古典的な関係で、女が粗相したらばしっと殴って、「お前は、そんな女じゃないはずだ!」って叱ったりさ。

坂本:なるほど! 叱ったりするんだね。

湯山:女の子が来て、愚痴ったりしたもんなら「そんなお前、嫌いだよ」って。

坂本:「人生ナメんじゃねえよ、バカヤロー!」みたいな(笑)。『ゴクセン』みたいに。

湯山:そうそう。古典的な男女関係を持ち込むんですって。

坂本:日常にそういうものが希薄になってきたからなんだろうな。ある意味、演劇だね。日常では、もうあまり見ないもんね。駅前とかで若い子やってないよね、そういうの。オレの学生の頃はそういうのやってたもんね。カバンとか持ってたら全部線路に投げちゃったりとか(笑)。

湯山:坂本さん、そういう時代があったんですねぇ。まあ、今はカバン投げて暴れるのは女の子の方かも。

次章へ続く・・・

(※4)青柳裕介の漫画作品。1975年より1986年まで、「ビッグコミック」にて連載された。
土佐の小さな漁師町と大海原を舞台に、古きよき時代の「男と女」のあり方を描いており、主人公・純平と八千代による不器用な愛のカタチは清々しい感動を誘う。
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PROFILE

湯山玲子 1960(昭和35)年・東京生まれ。
出版・広告ディレクター。(有)ホウ71代表取締役、日本大学藝術学部文藝学科非常勤講師。
編集を軸としたクリエイティブ・ディレクション、プロデュースを行うほか、自らが寿司を握るユニット「美人寿司」を主宰し、ベルリンはコムデギャルソンのゲリラショップのオープニングで寿司を握るなど日本全国と世界で活動中。
著作に文庫『女ひとり寿司』(幻冬社)、『クラブカルチャー!』(毎日新聞出版局)、新書『女装する女』(新潮社)。近著に『四十路越え』(ワニブックス)。プロデュースワークに『星空の庭園 プラネタリウムアフリカーナ』(2006夏 六本木ヒルズ展望台)、2009年まで通年の野宮真貴リサイタルなど。

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