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2010/02/05 UPDATE #017

フジテレビ開局50周年記念ドラマ 不毛地帯

国家に翻弄される個人の苦悩と救済というものを表してみたかった。これは過去の話ではなく、現在も世界中に起こっていることだと思うのです。 坂本龍一

番組プロデューサー・長部聡介氏インタビュー

―坂本龍一にメインテーマを依頼された経緯を教えてください。

『不毛地帯』をドラマにしようと考えたときから、音楽は坂本龍一さんにお願いしたいと思っていました。この作品で描く終戦から30年という時間的長さと重さ、戦争と経済復興、家族、愛、という多面的なテーマ、全体的スケール感......。それらをすべて背負っていけるような音楽、ということを考えると、普通の音楽家では成立しないのではないかと思ったのです。実現するかしないかはともかくとして、相当早い段階から(坂本さんの音楽を)イメージしていましたね。
具体的にはレコード会社を通じて打診したのがおそらく2年くらい前。劇伴を手がけていただくのか、プロデュース的な関わり方なのか、あるいは一曲書き下ろしていただくのか、いろんな形が考えられましたが、どういう形かは別にして、とにかくこのドラマのために、この作品に見合った楽曲を書いていただけないか、とオファーしました。
坂本さん本人にお会いして作品のコンセプト、テーマについて説明し、その結果、メインテーマを書き下ろしていただくことになったのです。

―楽曲を上げていただく上で、どのようなリクエストをされましたか?

非常に多面的要素を持つ奥行きの深い物語なので、音楽にもいろいろな間口が欲しい。戦争、経済成長、仕事、家族、恋愛などという、一見、ひとつのドラマの中では共存し得ないようなテーマが林立しているドラマを、音で表現して欲しいというリクエストをしました。
言い換えれば、なにかひとつのテーマを突き詰めていくというよりは、さまざまなメロディー、展開、テンポやリズムがひとつの楽曲に組み込まれているというようなイメージ。全く違うテーマがいくつもある中で、それらすべてをひっくるめているのが『不毛地帯』というひとつの作品なので、音楽も、ひとつのテーマを突き詰めていくというよりは、大きなテーマは表現しながらもさまざまな要素を含んだものにしていただけたら、というお話をしました。
坂本龍一という、音楽的に様々なジャンルをボーダレスに往来する自由な才能が、この複雑なテーマを抱えたドラマをどのような形で表現してくれるのか、その刺激的な化学反応を期待しました。

―出来上がったメインテーマを聴いての感想は?

ドラマが持つ多様なテーマに合わせて様々な解釈ができる楽曲、などと無茶なリクエストをしたものでしたが、上がってきたメインテーマはまさに一人の男の数奇な人生を表現してあまりある、スケールの大きな音楽でした。怒り、絶望、悲しみ、赦し、愛、多様な感情がクラシックの美しさと重厚感、60年代を思わせるジャズの疾走と交じり合った音楽の中に凝縮されているように思います。

劇伴音楽担当・菅野祐悟氏コメント

山崎豊子先生の名作『不毛地帯』を「今の時代だからこそ、映像化する」という話を聞き、是非参加させて頂きたいと思いました。また、世界的音楽家、坂本龍一さんがメインテーマを書かれるということで、劇中で音楽の競演をさせて頂いたことを、とても光栄に思っています。
作曲するにあたり、原作、脚本からイメージをつくり、撮ったばかりの編集前の映像を観させていただきながら繰り返しデモテープを制作し、澤田監督と何度も打ち合わせをして音楽の世界感を固めていきました。
現在ドラマは放送中ですが、とても見ごたえのある作品で、『不毛地帯』の1ファンとして毎週楽しみに観ています。坂本龍一さんの素晴らしいメインテーマとトム・ウェイツさんの素晴らしい歌声と共にサウンドトラックを楽しんでいただけたら幸いです。

菅野祐悟

ドラマ『不毛地帯』とは...

フジテレビ開局50周年記念連続ドラマの最後を飾る作品として、2009年10月より半年間、フジテレビ系列の木曜22時枠で放送されている連続ドラマ。
『白い巨塔』『大地の子』などで知られる山崎豊子の同名のベストセラー小説を、唐沢寿明、和久井映見、竹之内豊、佐々木蔵之介、小雪、原田芳雄、岸部一徳、天海祐希、阿部サダヲ、橋爪功、遠藤憲一といった各世代を代表する豪華な顔ぶれが、壮大なスケールでつづる一大巨編である。
舞台となるのは、第二次世界大戦終戦から、復興を目指して驚異的な高度経済成長を遂げるまでの日本。11年ものシベリア抑留という過酷な経験を経たあと、第一線の商社マンとしてビジネスの荒波にもまれていく主人公・壱岐正(唐沢寿明)の姿を、彼を取り巻くさまざまな人物との葛藤、憎悪、純愛、悔恨、嫉妬......など、今の時代にも通じる普遍的なテーマを絡めて丁寧に描写していく。
メインテーマほか劇中で流れる音楽の数々は、そんな、幾重にも折り重なった重厚なドラマをさらに盛り上げるものとして、重要な役割を担っている。

CD

坂本龍一によるメインテーマのほか、トム・ウェイツによるエンディング・テーマ、さらに「ガリレオ」「Mr.ブレイン」などの音楽も手がける菅野祐悟による劇伴音楽もコンパイルしたサウンドトラック。
戦後から高度経済成長期にかけての激動の時代を、さまざまな運命に翻弄されながら生き抜いたひとりの男の半生を照らし出すにふさわしい、多彩な楽曲が収録されている。

【収録楽曲】

01. FUMOCHITAI   main theme
02. 不毛地帯-生きて歴史の証人たれ
03. 近畿商事
04. 極北の流刑地
05. 熾烈な戦い
06. 信念
07. 忍び寄る影
08. 権力闘争
09. 未知の世界
10. 一途な思い
11. 疑惑
12. 心
13. 過ち
14. 不毛地帯-生きて歴史の証人たれ Ballad Ver.
15. 祖国
16. TOM TRAUBERT'S BLUES(FOUR SHEETS TO THE WIND IN COPENHAGEN)
17. FUMOCHITAI   main theme - piano version

商品名

坂本龍一
LOVE IS THE DEVIL
2010/3/17 発売

MORE DETAIL

坂本龍一による映画サントラの再発が決定!
1999年に発売され、今や廃盤状態となっている映画「愛の悪魔」の復刻盤。
ピアノとシンセサイザーだけで作られた音楽が、画家フランシス・ベイコンと、その恋人だったジョージ・ダイヤーの関係を象徴するかのように、静かに、そして激しく鳴り響いている。
本作には新たにTaylor Deupreeによるリミックス楽曲も収録!


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