HOME > commmonsmag > commmons SPECIAL > 【#041】蓮沼執太&U-zhaan『2 Tone』リリース記念特集
2017年2月22日(水)に発売される、蓮沼執太とU-zhaanの2人による
コラボレーションアルバム『2 Tone』。
全22問の質問を通して、謎に包まれた本作の全貌をご紹介します。
Hasunuma:今まで僕らが会うのはライヴの現場だったので、レコーディング・スタジオで会うのは楽しかったですね
U-zhaan:執太とは食の好みが似ているので、作業のあとに夕飯を食べるのを楽しみにしていました。でもだいたい遅くまで没頭してしまうので、食事を摂れずに帰宅するのがほとんどでした。
H:僕ら2人がタイトルを決められなくて困り果てたあげく…
デザインを担当して頂いた長嶋りかこさんが決めてくれました。
U:ジャケットデザインを見ながら「この雰囲気に合うタイトルにしよう」と、アートワークを担当した長嶋りかこさんも交えた3人で話し合っているときに、長嶋さんから出た言葉です。
名刺代わりの一曲目。タブラと電子音楽で作られたアイキャッチ的な楽曲。
H:僕がモジュラーシンセで即興的に作ったものにタブラの音をのせ、15分くらいで作ったスピード感でしょうか。
U:オープニングのファンファーレみたいなものだと思っていただければ嬉しいです。
坂本龍一との交友でお馴染みのアート・リンゼイはアメリカ生まれの音楽家。1977年、ニューヨークにてバンド「DNA」を結成し、ノー・ウェーブ(No Wave)と呼ばれるムーブメントを代表する存在となる。バンド解散後はソロとして活動。2017年1月には13年ぶりの完全新作『Cuidado Madame(ケアフル・マダム)』を発表した。
H:アートの大ファンなのでその嬉しさが聴きどころでしょうか?
タブラの音色で組んだビートも気に入ってます。
U:それはやはり、アート・リンゼイさんの声とギターでしょうね。アートさんが描いてくれた歌詞も、趣があって素敵です。ところどころでメトロノームのように入っているタブラも気に入っています。
源泉は別府現代芸術フェスティバル2015「混浴温泉世界」において、蓮沼執太が制作した『松原温泉アンビエント』という音楽作品。別府・松原温泉で湯に浸かりながら約18分の音楽鑑賞するというもので、演奏にU-zhaanが参加していた。
H:温泉に入りながら音楽を聴く作品のために作曲したもので、お風呂で聴いてみてください!
U:後半に執太がピアニカでひたすらリズムを刻んでいるパートがあるんですが、タンギングがうまいなあと聴くたびに思います。
デヴェンドラ・バンハートはアメリカ生まれのシンガー・ソングライター。1930年代のようだと形容されるオーガニックな音楽スタイル、フリー・フォークからサイケデリック・ロックまでを包容する音楽性で多くのフォロワーを生み出している。浅川マキ、はっぴいえんどなど日本の音楽への造詣も深い。
H:東京でデヴェンドラさんのボーカル録音した日がアメリカ大統領選でした。ボーカルを支えている粒のような音たちが聴きどころです。
U:デヴェンドラ・バンハートさんによる日本語での歌唱です。発音、すごくきれいですよね。
本作の制作は2016年4月に開催された「commmons10 健康音楽」において、ヨガインストラクター・磯沙緒里の生演奏ヨガにU-zhaan + 蓮沼執太 + ヨシダダイキチ として出演したことがきっかけ。ヨシダダイキチは日本のシタール奏者。1996年よりインドにてシタールとインド音楽を学び、ボアダムス、UAらとの共演などロック、現代アート、インド古典など様々なフィールドで活動している。
H:commmons10・健康音楽のためにユザーンとヨシダダイキチさんと一緒に作った曲ですが、スポーティな格好をして聴いてみてください?
U:1度もメロディーを弾かないシタールですかね。この曲では、カッティングに専念してもらいました。ハーモニクスを綺麗に鳴らす、ヨシダさんのカッティング・シタールが大好きなんですよ。
U-zhaanの要望に応えて蓮沼執太が書き下ろしたタブラソロ曲。
H:タブラの音色や倍音の響きを大切にして作曲しました。これを生演奏出来るユザーンは本当に凄いんです。今度機会があれば、パーカッシヴにフォーカスしたテーマでタブラ曲作りたいですね。
U:中野のリハーサルスタジオで、僕が5個のタブラを選び、そこから鳴らせる10個の音だけで作曲してもらいました。音数は少ないですが、このアルバムの根幹である曲のひとつだと思います。
坂本龍一とのメールでの交流を通して制作された楽曲。
H:坂本龍一さんと音の素材をやり取りしていた楽曲が元になってます。音の響き、質感、音楽のグルーヴ、どれをとってもオリジナルになるような楽曲にしました。
U:どの音が教授で、どの音が執太なのか考えながら聴くと楽しいかもしれません。僕は執太に答え合わせをしてもらったのですが、正解率は80%ぐらいでした。
オリジナルはご存知、ハナ肇とクレージーキャッツの「スーダラ節」。ほんわかしたメロディラインを紡ぐアルトホルンを吹いているのは、もちろんU-zhaan。
H:家にユザーンが来て、スーダラ節の楽譜をインターネットで買って、僕がマイクを用意して録音した、早朝レコーディングが懐かしいです。
U:録音のときにマイクスタンドがなくて、執太がマイクを手で持っていたのを思い出します。「スーダラ節」、いい曲ですよね。こどもの頃から大好きでした。そして、トランペットをレコーディングしたのはこれが初めてです。
2015年、坂本龍一の休養中にU-zhaanが留守番ナビゲーターを務めた『RADIO SAKAMOTO』(J-WAVE)に、蓮沼執太がゲスト出演した際のスタジオセッションの模様を再編集したもの。
H:レコーディングスタジオで行った即興セッションがベースになってます。ライヴ感がある楽曲展開が気に入ってます。
U:もともと坂本龍一さんのラジオ用に演奏したものなので、聴くとなぜか教授の顔が浮かぶ曲です。3曲作ったのを、ひとつにまとめました。
モデル・女優の水原希子が出演する「パナソニックビューティ」CM曲として描き下ろした蓮沼執太の楽曲をリアレンジしたもの。優しく語りかけるようなボーカルはオリジナル同様、蓮沼が務め、U-zhaanはなんとコーラスを担当している。
H:ユザーンと2人で演奏出来るようなアレンジに変えてあります。まさかタイトルが「Dryer」になるとは思いも寄りませんでした。命名はU-zhaan。
U:このアルバムで唯一執太が歌っている曲で、唯一カンジーラ(南インドのタンバリン)をビートの中心に置いている曲です。かなり久しぶりにギターも弾きました。
ペシュカール(peshkar)とは伝統的なタブラソロのリズムパターンのひとつ。穏やかな16ビートで演奏される。
H:ペシュカール、というインド音楽のスタイルを独自に解釈しました。アナログシンセで一生懸命作った緻密な電子音がたくさん入ってます。
U:「I Like Peshkar」というのは僕の気持ちそのままで、タブラソロで冒頭に演奏される「ペシュカール」というパートがとても好きなんですよ。ぜひ一度、ザキール・フセイン先生のペシュカールを聴いてみて欲しいです。
磯沙緒里は日本のヨガインストラクター。2003年、ヨガの魅力を体感し、会社務めの傍ら国内外の先生からヨガを学びはじめる。現在はスタイルに捉われずにヨガを楽しんでもらえるよう、様々なシチュエーションでのヨガを行う。「commmons10 健康音楽」には、U-zhaan + 蓮沼執太 + ヨシダダイキチとの生演奏ヨガやラジオ体操に出演した。
H:タイトルを考えている時に磯さんのことが思い浮かび「ISO」と名づけました。またISOTOPEの”ISO-”等しい、というDouble Meaningでもあります。
U:これは、北インド古典音楽がベースですね。執太に自由に参加してもらったら、すごく気持ちのよい音楽になりました。3分弱におさめてありますが、20分ぐらいやってもよかったなあと思っています。
H:中国北京にある日本大使館で公開インタビューのトークをさせてもらった時に入場のBGMとしてコッソリかけてました。スーダラ節が流れた時に会場が少しざわつきましたねw
U:マスタリングが終わってすぐにインドへ来てしまったので、すべて完成した形では誰にもまだ聴いてもらっていません。ただ、ラジオで「A Kind of LoveSong」を初オンエアしたときにASA-CHANGから「1音鳴った瞬間から、湯沢くんだってわかるね」と言われたのが嬉しかったです。ずっと、そんなタブラ奏者になりたかったので。
H:二 色
U:完 成
H:せっかく楽曲がたくさん増えたので、もっとユザーンと共同作業を追求していきたいです。
U:まだまだ2人だけでやってみたいことがいくらでもあるので、それを少しずつ実現できたらとは思いますが、強いて言うならフアナ・モリーナさん。
H:ユザーン家にある大量のスパイスを使って
本格的なカレーを朝食として作りたいです。
U:クシで髪をとかしてみたいです。
もう、18年ぐらいやっていない気がするので。
H:ドゥウッ(低音で)
U:ヒョロ~。
H:猫好きです。最近会ったのは長嶋りかこさんのスタジオにいた
黒いキュート猫。
U:しばらく前に猫アレルギーが治ってから、どんどん好きになって来ました。ところで、インド人って猫好きの人がほとんどいないんですよ。
あれはなぜなんでしょうね。
※注:インタビュー実施時、蓮沼執太は北京、U-zhaanはムンバイに滞在中
H:お蕎麦ですね。
U:新鮮なルッコラ。
H:ユザーンと一緒に唯一無二なユニークな音楽が作れたと思います。このアルバムはあなたの新しい分野を開拓します(自信あり!)。楽しんで聴いてください。
U:貴重な時間を、僕と執太のために割いてくださってありがとうございました。もしよかったら、CDも聴いてみてください。
2017.2.22 On Sale
蓮沼執太&U-zhaan 『2 Tone』
実験音楽やアンビエントミュージック、テクノやポップス、そしてインド音楽までを縦横無尽に横断するジャンルレスな作品。
アート・リンゼイやデヴェンドラ・バンハートをボーカルに迎えた楽曲、坂本龍一との共作曲、蓮沼執太が書き下ろしたタブラ・ソロ曲など聴きどころ満載!!
蓮沼執太
1983年、東京都生まれ。音楽作品のリリース、蓮沼執太フィルを組織して国内外でのコンサート公演をはじめ、映画、演劇、ダンス、音楽プロデュースなどでの制作多数。近年では、作曲という手法を様々なメディアに応用し、映像、サウンド、立体、インスタレーションを発表し、個展形式での展覧会やプロジェクトを活発に行っている。主な個展に『compositions』(Beijin Culture and Art Center・中国 2017)など。
U-zhaan
1977年、埼玉県川越市生まれ。インドの打楽器・タブラの奏者。2010年にU-zhaan × rei harakamiとして「川越ランデヴー」「ミスターモーニングナイト」をリリース。2014年には坂本龍一、Cornelius、ハナレグミなどをゲストに迎えたソロ名義のアルバム『Tabla Rock Mountain』を発表。2016年には映画『マンガをはみ出した男 赤塚不二夫』の音楽を蓮沼執太と担当し、ボーカルにタモリをフィーチャリングした主題歌が話題となった。