ASA-CHANG&巡礼
影の無いヒト
盛況だったFNACでのインストア・ライヴの後、宿の近くのプロヴァンス料理レストランへと打ち上げに向かう巡礼一行の中にU-zhaanの姿はなかった。日本からの長時間移動で丸一日タブラに触れられず、インストア・ライヴでは思い通りに叩けなかったので、翌日の本番まで部屋に籠もって練習する、と言うのだ。彼の演奏にはそれほどの鍛錬が必要なのか!
翌朝、巡礼@ニーム公演いよいよ本番の日はあいにくの雨だった。サウンドチェックのため早いうちから会場に向かうASA-CHANGやスタッフ達と別れ、僕は一人、L'EXの別会場に足を運んだ。パラダイス山元さんのマン盆栽ワークショップを覗き、お昼過ぎに三上寛さんの弾き語りを見ていると、U-zhaanから電話が鳴った。「オレもプロヴァンス料理に連れてって!」。部屋籠もりは無事終了したようだ。
午後4時すぎ、雨雲のせいですっかり暗くなった空の下、旧市街にあるニーム劇場 に着いた。この劇場は近年改装されたばかりで、設備は真新しいが、歴史は18世紀末までさかのぼれる。2フロアの客席には約800名をゆったりと収容出来る。随分とイイホールじゃないですか! バルコニー上方の席に腰掛け、ステージを見下ろすと、ASA-CHANGとU-zhaanが中央に座り、その周りでは日仏のスタッフ達による日本語、フランス語、英語が飛び交い、入念なサウンドチェックが行われていた。地元のテレビやラジオの取材クルーも入っている。二人を白く浮かび上がらせるブラックライトの照明装置も日本で使っているのとほぼ同じものをL'EX側がわざわざ制作してくれたらしい。
雨は次第に強くなり、本番直前には結構な土砂降りになっていた。それでも、日本の音楽への関心の高さやL'EXのプロモーションが十分に行き渡っていたおかげか、開場とともに席は着々と埋まっていき、開演時には8割以上の入りとなっていた。
JUNRAYTRONICSの起動音に続いて、一曲のうちにラッパとタブラという巡礼の二大重要要素が登場する「Parlor」からスタート。音量もたっぷり、ホールの鳴りもなかなかだ。そういえば、これまでに何度も巡礼のライヴを見てきたが、たいがいはオールスタンディング(または床に直座り)のライブハウスや野外フェスでの演奏だった。残響が心地よい大型のコンサートホールで、快適なシートに背中を埋めながら巡礼を聞くのは僕にとっても初めてだ。
続いてfeat.小泉今日子の「背中」へ。小泉今日子のいかにも日本の歌謡曲歌手然とした発声方法はフランス人には異国情緒たっぷりに聞こえるのではないか。
ジンタやチンドンを思わせるモノ悲しいメロディーを持つ「海峡」や「2月」、そしてインド古典音楽のリズム体系を元に「イチ、ニ、サン、シ~」という、外国人にもおなじみの日本語を用いて表現した「12節」を過ぎた頃には、観客はASA-CHANG&巡礼の独特な音世界にどっぷりと浸っていた。
(最終回へ続く)
text/サラーム海上
photo(上)/Junray Staff
photo(中・下)/Kaname Onoyama
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約4年ぶり、commmons移籍第一作目となるアルバムは、結成10周年を迎えた彼らのラジカルなサウンドが大胆に放たれた一枚!
坂本龍一、宮藤官九郎、モデルの太田莉菜、キセル、Talvin Singhら、ASA-CHANG&巡礼と深い各界のアーティストが参加し、色彩豊かな作品となっている。
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ASA-CHANG&巡礼
打楽器奏者ASA-CHANG、プログラム担当の浦山秀彦、タブラのU-zhaanで構成。
「声もひとつの楽器」をコンセプトに、言葉を分子レベルまで刻み込み、タブラと語りかける“発明的”な楽曲が特徴的で、聴く者を不思議な空気で包み込む。
過去に小泉今日子やハナレグミを作品に迎えた他、近年ではフランスでライブを行ったり、自主イベント「JUNRAY DANCE CHANG」を成功させるなど、精力的な活動を行っている。