全24公演におよんだ“Ryuichi Sakamoto Playing The Piano 2009”もいよいよ千秋楽。会場である昭和大学人見記念講堂を訪れるなり、「今日が最後かぁ」という妙に感傷的なキモチに包まれます。けれど、そんな私を待ち受けていたのは、いつもながらに忙しく働くスタッフたちの姿。機材を搬入したり、展示パネルを設置したり、ツアーグッズを並べたり……と、淡々と作業をこなす彼らに、自然と身が引き締められる思いでした。そう、全24公演にわたって最高の仕事をしてきたスタッフたちがいたからこそ、成立したこのツアー。ファイナルだからといって、いや、ファイナルだからこそ、決して手を抜くわけにはいかないのです。もちろん、そのただならぬ緊張感はリハーサル現場からもビシビシと伝わってきました。最後のリハーサル見学に参加された当選者の方々も、その空気を全身で感じることができたのではないでしょうか。
そして16時の開場とともに、外で待ち受けていた沢山のお客さんが一気に講堂内へ。展示物をじっくり見たり、ツアーブックレットを購入したりと、開演まで思い思いの時間を過ごします。もちろん、発売されたばかりのmy commons t-shirtsも、開演前に予定枚数のほとんどを売り切るほどの大好評! ご購入できなかったお客さまは本当にゴメンなさい。
17時すぎ、いよいよ最後の公演が幕を開けました。序盤は全公演共通の『out of noise』な流れ。今回のツアーのハイライトのひとつである「composition 0919」の写真撮影では、いつも以上に鮮やかなフラッシュライトやシャッター音が入り乱れ、会場全体が熱を帯びているよう。一方で「koko」や「fountain」では、しんと静まり返った中でしっとりとした旋律が会場に響きわたります。その演奏のひとつひとつが、これまで以上に際立って聞こえたのは、最終日ゆえだったからかもしれません。
終盤、「どっちの方向に行こうかな?」と呟きながら譜面を吟味する教授。「やっぱり最終日だからこっちかな?」と言いながら、本編最後に演奏されたのは「merry christmas mr. Lawrence」。そしてアンコール1曲目は「the last emperor」。ここからは、教授のサービス精神がたっぷり反映された贅沢な選曲で、重厚でありながら繊細な旋律が次々と紡がれていきます。その余りにもの美しさに、思わず眩暈がしてしまいそう……。さらにアンコールで「parolibre」を演奏し、この日のライヴは幕を閉じました。
……と、思いきや、なんと最後にサプライズが! 客電がつき、お客さまも帰りかけている中、再び教授が登場! 今回のツアーでの締め曲として定番となっていた「aqua」を情感たっぷりに演奏し、拍手喝采の中でツアーを締めくくったのでした。
公演終了後は、写真でも公開されているように、特大ケーキ付きの盛大な打ち上げが。思えば、iTunesでの最短24時間以内配信、リハーサル見学、CDケースの回収など、さまざまな取り組みが行われたこのツアーには、参加されたお客さまやスタッフそれぞれに、少しずつ違った思い入れがあったはずです。そして、それと同じく沢山の思い出も……。私自身、ツアーを通じて出会えた人々や光景から、沢山の思いを受け取ることができました。このTOUR REPORTからも、多くの人々が沢山の思いや幸せを感じ取ってくれるたら、とても嬉しく思います。では、またお会いできる日まで!