今年も無事に終了したWORLD HAPPINESS。芝生の上で個性的な16組のステージを一日で観られるのはもちろんのこと、会場全体を包み込むピースフルな空気感はこのフェスの名物と言ってもいいでしょう。
このレポートでは、commmonsアーティストのステージや会場で行われたイベントの模様など、体験型フェスとしての魅力をお伝えします。
この日は朝から30度を超える暑さ。じわっと肌に迫る日差しがフェスにふさわしい夏の一日を予感させます。早朝から汗をにじませ開場を待ちわびるオーディエンスの列を遠目にcommmonsmartブースの準備に励んでいたcommmonsスタッフ一同。ブースの前に有名遊園地のようなパーテーションを設置されるのを見て「果たして、本当にこんなに大勢のお客様が並ぶのだろうか」と不安になっていたのですが…。開場すると同時にいきなり長蛇の列!! 一気に戦場のような慌ただしさとなったブース。お客様の熱気に圧倒されそうなスタッフなのでした。もちろん、多くのお客様のお目当ては「テクノ・ポップ」Tシャツ、タオル、ピンバッジです。次から次へと売れていき、午前中にはTシャツ・タオルともに完売してしまう盛況ぶりでした!
この夏のイベントですっかりおなじみになった、ベースの村田シゲ(□□□ / Cubismo Grafico Five / Circle Darko)、ドラムの神谷洵平(赤い靴)と共に登場したコトリンゴ。疾走感のある「closet」、軽快なリズムが楽しい「恋とマシンガン」、新曲「ghost dance」を披露し、トリオならではの力強いサウンドで一気にオーディエンスを魅了しました。女性ファンからの「かわいい!」という声援が飛ぶ中、「こんばんはー! …あっ、こんにちはですね(照)」と、彼女らしいのんびりした性格が表れるMCには会場から思わず笑いがこぼれます。大きな会場にもかかわらず、彼女のプライベートな空間に招き入れられたかのような、ふんわり優しい空気で満ちたステージでした。
アーティスト名がコールされただけで会場中から大きな歓声と拍手が沸き起こったFennesz+Sakamotoのステージ。坂本龍一がFenneszと登場してグランドピアノの前に腰掛けると、今度は会場中が彼らの手元に注目し一瞬静寂がやってきたような気さえしました。やおら始まった教授のピアノ内部奏法。弦を擦って出しているとは思えない涼やかな音色に、Fenneszが幻想的なギターやエフェクトを加える即興のパフォーマンスが繰り広げられます。まるで二人でひとつの薄く透明な織物を織っているような、なにやら神聖なものを見ているような…。どこからか風も吹いてきて会場中を静かに包み込み、ひとときの涼を身体全体で体感できる贅沢なひとときとなりました。
お昼も過ぎてようやく通常の静けさを取り戻したcommmonsmartのブースは、コトリンゴのサイン会準備にとりかかります。コトリンゴがステージで告知をしたことから、直後から「どのアイテムを買えば参加できるのでしょうか?」と問い合わせにいらっしゃるお客様が続出。ブースにやって来たコトリンゴも、この数にはちょっとビックリした様子でした。「ただいまよりコトリンゴのサイン会をはじめます!」とアナウンスをすると、みるみるうちに多くのお客様が列を作り始めました。
大人気だった「コトリンゴ Tシャツ」や「手ぬぐい」、ライブで好評だった『picnic album 1』…様々なアイテムを手に、コトリンゴとおしゃべりしながら楽しそうにサインを受け取り、握手を交わすお客様。その幸せそうな様子を見たお客様がさらに列を作り…といった調子で、あっという間に関連商品はすべてSOLD OUT。一時間ほどの限られた時間でしたが、多くの方からの「楽しかった!」という言葉に嬉しくなってしまったcommmonsスタッフなのでした。
今年のWORLD HAPPINESS、最大の特徴は「東日本大震災復興支援」「参加型フェスティバル」という新たな軸ができたこと。復興支援としては、会場には募金箱が設置されたほか、commmonsmartには「こどもの音楽再生基金-School Music Revival」への募金箱が、お隣には被災地の復興を目指し取り組んでいる生産者の農作物やジュースなどの食材を販売する「いわてS-FARM」が登場。氷水に浸かった冷やしトマトや枝豆、冷たいソーダといった暑い身体に嬉しい食材がズラリと並ぶ様は圧巻でした。
そして多くの家族連れで賑わっていたのが「体験型ワークショップ」のコーナー。WORLD HAPPINESSならではののんびりした雰囲気の中で、古布でペットボトルホルダーを編んだり、蜜蝋で手作りキャンドルを作ったり、ボディアートにチャレンジしたりと普段なかなかできない体験に子供たちの表情も真剣そのもの。なんとも微笑ましい光景がそこにはありました。
雨が降り、だいぶ過ごしやすくなった頃。commmonsmartブースには、なんとお忍びで坂本龍一が登場していました。とはいえ普通に会場内を歩いて現れたため、多くのお客様がビックリ! 思わず二度見する人、携帯を向けようとして慌てる人、スタッフに「本当に坂本龍一ですか?」と聞く人…と、文字通りの大混乱となりました。そんな中、教授はcommmonsスタッフと一緒にWORLD HAPPINESS会場限定の「テクノ・ポップ ピンバッジ」を自らアピールして手売り! さらに買ってくださった方との握手に気さくに応じるなどして大サービス!! 普段なら叶わない至近距離で教授と触れ合えるとあって、あっという間にブース周辺は人だかりが…! 滞在時間は約20分ほどでしたが、WORLD HAPPINESSでなければ実現できないかもしれない、サプライズなイベントとなりました。最後に教授はお隣の「いわてS-FARM」スタッフと交流し、再び楽屋へと歩いて帰っていったのでした。
TEI TOWAからの呼び込みの後、さっそうと現れたYellow Magic Orchestra。細野晴臣、坂本龍一、高橋幸宏はもちろんのこと、サポートメンバーのFennesz、小山田圭吾、権藤知彦も「NO NUKES MORE TREE」のメッセージがデザインされたポロシャツを着用しての登場となりました。そして唐突に新曲「Fire Bird」が始まったのです。手塚治虫の『火の鳥』の世界観に通じるような、壮大で厳粛で、でもどこか温もりのある楽曲に、巨大な観音像や神殿を目の前にしたときのようにただただ立ち尽くオーディエンスでしたが、静かに曲が終わると地の底から湧き上がるような拍手喝采! この日のステージに込められた想いを誰もが直感した瞬間でした。続けてライブではおなじみの「Firecracker」「Behind The Mask」へ。この夏に行われた多くのライブを経て、心なしか演奏がファンキーだったり、パンキッシュだったり。これまでにないエネルギーに満ちあふれたパフォーマンスの幕開けです。個性の異なるふたりのギタリストのノイズが炸裂すると、20代と思われる若いオーディエンスまでが、まるでロックバンドのライブのように両手を挙げてヒートアップ! その熱狂が最高潮になった「千のナイフ / 1000 Knives」では、教授が再び脇に差してあった「NO NUKES MORE TREE」の巨大フラッグを高々とかざしてみせたのでした。これには会場全体からの大きな拍手が向けられます。最後はYellow Magic Orchestra3人が3本のフラッグを大きく左右に振りながらのフィナーレとなりました。震災からの再生を願って企画された今回のWORLD HAPPINESSでしたが、日本の再生のために私たちひとりひとりが何をできるのか、改めて胸に問いかけることができたステージでした。
アナタもWORLD HAPINESS 2011についてつぶやいてみませんか?
ハッシュタグは#WH2011 です!!